CNBC、Kalshi予測市場を導入！29歳の創業者が最年少のビリオネアに

CNBCは予測市場運営会社Kalshiと提携し、2026年からKalshiのイベント確率データをCNBC番組に統合し、専用のスクロール字幕で予測動向をリアルタイム表示する。Kalshiは11月に10億ドルを調達し、評価額は110億ドルに達し、CEOのLuana Lopes Laraは世界最年少の自力で億万長者になった女性となった。

予測市場が地下賭博から主流メディアへジャンプアップ

（出典：CNBC）

予測市場は、ニッチなツールから主流の金融情報源への歴史的な転換期を迎えている。CNBC社長のKC Sullivanは、予測市場が重要イベントを理解するための有力なツールになりつつあると述べ、Kalshiのデータをネットワーク報道の「強力な補完」と表現した。この発言は、主流金融メディアの予測市場への姿勢が懐疑から受容へと変化したことを示している。

従来の金融報道は主に過去データ、専門家の意見、経済モデルに依存して市場動向を分析してきた。しかし、これらの方法はすべて後追い型もしくは仮定に基づいており、市場参加者の集合的な期待をリアルタイムで反映することはできなかった。Kalshiの予測市場は、数千人の実際の資金を投じた参加者の期待を単一の確率数値に集約するという、全く新しい情報次元を提供する。この確率は専門家の主観的判断ではなく、市場の駆け引きの即時的な結果だ。

KalshiのCEO、Tarek Mansourは今回の統合を財務報告の「次の発展段階」と表現し、現状を記録するデータから、未来を即時的に予測する方向へ転換すると語った。この論述は予測市場の核心価値である「先見性」を捉えている。今後、CNBCが「FRBが利下げする可能性」を報道する際、従来はアナリストの見解や過去データを引用していたが、これからは「Kalshi市場で12月利下げ確率78%」という数字が画面に表示される。この数字はすべての市場参加者の判断と資金のベットを総合したものだ。

数日前、KalshiはCNNとも独立したデータ統合提携を発表し、予測市場をテレビ分析やニュース報道に組み込むとしている。CNNとCNBCというダブルメディア戦略は、Kalshiが予測市場の主流化を積極的に推進していることを示している。小規模な金融メディアからではなく、まず2大主流メディアと組んだことは、Kalshiの野心と資源力を物語る。

CNBCが統合するKalshi予測市場の4つの主な活用シーン

政治選挙報道：各候補者の勝利確率や重要スイング州の予測をリアルタイム表示

経済データ予測：GDPや雇用統計などの市場予想値を事前に表示

企業決算予想：主要企業の決算パフォーマンスに対する市場全体の予測を統合

地政学的イベント：貿易協定、軍事衝突などのイベント発生確率を市場評価として追跡

この統合により、視聴者の経済ニュースの消費スタイルが抜本的に変わる。これまで視聴者は専門家の分析を受動的に聞いていたが、今後は「市場が何らかのイベント発生をどれだけ確率的に見ているか」が即時的に分かり、その集団的な期待値に自ら賛同するか判断できるようになる。

110億ドル評価の裏にある驚異的成長ストーリー

Kalshiは2018年創業で、米国最大規模の規制下予測市場プラットフォームの1つを運営している。ユーザーは選挙、スポーツ、経済指標の発表やその他の現実イベントの結果に関する取引を行える。このビジネスモデルは過去には賭博のグレーゾーンとみなされていたが、Kalshiは米商品先物取引委員会（CFTC）の認可を取得し、合法的な金融商品へと転換した。

フォーブスの報道によれば、Kalshiは11月に10億ドルを調達し、評価額は110億ドルに到達。このラウンドの規模とバリュエーションは驚異的で、10億ドルの一回調達は2025年世界最大級の資金調達案件となり、110億ドル評価は多くの老舗フィンテック企業を上回る。この爆発的な成長は主に2024～2025年の米大統領選年の予測市場ブームと密接に関連している。

この結果、29歳の共同創業者2人とも億万長者となり、とりわけCEOのLuana Lopes Laraは世界最年少の自力女性億万長者となった。Laraのストーリーは非常に刺激的で、MITでコンピュータサイエンスを学んでいた時に共同創業者Tarek MansourとKalshiのビジネスモデルを構想。わずか7年で、大学寮のアイデアを評価額100億ドル超の企業へと成長させた。

Kalshi成功の鍵は、精緻な市場ポジショニングと規制戦略にある。オフショア型の予測市場プラットフォームとは異なり、Kalshiは当初から米国規制下での運営を選択。これによりコンプライアンスコストや運営制限が増えたが、主流機関からの信頼も獲得した。CNBCやCNNがKalshiと提携したのも、規制下という立場が法的リスクの懸念を解消したことが大きい。

Kalshiは自社プラットフォーム上にCNBCブランドページも開設し、同局が選定したマーケットを掲載する予定。この双方向統合は連携の深さを示しており、単にCNBCがKalshiのデータを使うだけでなく、KalshiもCNBCのブランド力を活用してユーザー獲得を狙う。CNBC視聴者が番組内で予測確率データを見ることで興味を持ち、Kalshiプラットフォームを訪れるという流入効果が生まれる。

Kalshi 110億ドル評価を支える4大要因

規制優位性：CFTC認可の合法的地位が法的リスクを排除

主流メディアの後ろ盾：CNBCとCNNとの提携でブランド信頼性向上

大統領選イヤー効果：2024年米大統領選による予測市場取引量の爆発

技術的障壁：規制下予測市場プラットフォームの構築は高い技術・コンプライアンス参入障壁がある

しかし、110億ドル評価には疑念もある。予測市場の取引量は主要イベント依存度が高く、大統領選イヤーの取引量は平時の数倍となる。2026年中間選挙後に取引量が落ち着いた場合、Kalshiがこの評価額を維持できるかは未知数だ。だからこそKalshiは積極的にメディア提携を進め、予測市場を「選挙ツール」から「日常の金融情報源」へと拡張しようとしている。

Polymarketのブロックチェーンチャレンジと100億評価競争

Kalshiは米国規制下の予測市場だが、唯一注目されているプラットフォームではない。ブロックチェーン、Polygon基盤の予測市場Polymarketも、最近の提携や規制承認で影響力を拡大している。Polymarketの評価額は10月に100億ドルに達し、Kalshiの110億ドルと極めて接近、両者は予測市場の覇権争いを繰り広げている。

10月にはスポーツブック運営大手DraftKingsが、Polymarketを新予測市場プロダクトの決済インフラとして採用。さらに11月、PrizePicksとも提携し、既存のファンタジースポーツに加え、スポーツ・エンタメ・現実イベントの予測も可能にした。またPolymarketはTKO Group Holdingsと複数年契約を結び、UFCとZuffa Boxingの公式予測市場パートナーとなった。

PolymarketとKalshiの根本的な違いは技術構造と規制ルートにある。PolymarketはPolygonブロックチェーン上に構築され、取引記録は透明かつ不変で、暗号資産で参加できる。この分散型構造は暗号ネイティブユーザーを惹きつけるが、米国規制下では課題も多い。Polymarketは最近米商品先物取引委員会の仲介業運営認可を受け、トークン発行を計画している。

執筆時点で、Polymarketユーザーは米国でのサービスローンチ可能性を99%と見ており、2025年中の実現が見込まれる。この高確率は、市場がPolymarketの規制承認を確信していることを反映している。もしPolymarketが米国で合規運営・トークン発行に成功すれば、Kalshiと正面から競合することになる。すなわち、規制下の中央集権型プラットフォームと、合規志向の分散型プロトコルの戦いだ。

Kalshi vs Polymarket 3つの主な違い

技術構成：Kalshiは中央集権システム、Polymarketはブロックチェーン分散型

規制ルート：KalshiはCFTC承認済、Polymarketは現在申請中

ユーザー層：Kalshiは伝統的金融ユーザー、Polymarketは暗号ネイティブユーザーを惹きつける

両プラットフォームの競争は最終的に予測市場産業全体の成長を後押しする可能性が高い。Kalshiは主流メディア連携で一般層を教育し、Polymarketはブロックチェーン技術でイノベーターを引き寄せ、双方が市場のユーザー基盤と利用シーンを拡大。こうした健全な競争は業界全体にポジティブな影響を与える。

規制環境と予測市場の将来展望

コネチカット州はRobinhood、Crypto.com、Kalshiに予測市場サービス停止を命じた事例があり、州レベルの規制には依然不確実性が残る。Kalshiは連邦のCFTC認可を受けているものの、一部州政府は予測市場を賭博とみなし、運営を禁止・制限している。連邦と州の規制不一致は、予測市場プラットフォームにとって継続的な課題だ。

今後、CNBCやCNNなど主流メディアの信頼が、予測市場の合法性や社会的受容性を大幅に高めるだろう。視聴者が経済ニュースの中で予測確率データを見ることに慣れれば、このツールは「目新しさ」から「標準」へと変わる。今後数年で、予測市場は株式市場や債券市場と並ぶ重要な金融情報源となる可能性がある。

2026年から始まるメディア統合は、予測市場業界の分水嶺となるだろう。もし統合が成功し視聴者の反応が良好なら、さらなるメディアや金融機関が続き、ネットワーク効果が生まれる。逆に失敗や論争が起これば、業界全体の主流化プロセスが遅れる可能性もある。