深掘り:ZachXBTの調査が示すAxiom、内部ツールがインサイダー取引の通路にどう変わったのか?

2026年2月26日、オンチェーン探偵 ZachXBTは待ち望んでいた重厚な調査報告を予定通り公開し、暗号資産取引所Axiom Exchangeを標的とした。この報告は、同プラットフォームの複数の従業員が内部支援ツールのアクセス権を悪用し、長期間にわたりユーザーのプライベートウォレットアドレスを追跡し、インサイダー取引に関与していた詳細を明らかにしている。

この事件は、取引所の内部ガバナンス、ユーザープライバシー保護、そして「信頼」というコア資産の境界について、業界内で深い省察を促している。本稿では、事実に基づき事件の経緯を整理し、各側の見解を解き明かし、またこの事件が暗号業界に与える可能性のある構造的な影響を検討する。

事件概要:内部権限からインサイダー取引への告発

ZachXBTによると、今回の調査はAxiomの不正行為に関する通報に端を発している。調査の核心は、Axiom内部の従業員が権限を濫用し、本来顧客サポート用に設けられたツールを監視や利益追求のために悪用していた点にある。具体的には、関与した従業員は、上級営業(BD)担当のBroox Bauer、その友人Gowno(Seb)、もう一人のBD担当Ryan(Ryucio)を含む。告発の核心は、これらの従業員が内部ダッシュボードを利用し、紹介コードやウォレットアドレス、ユーザーUID(身分証明)を通じて、任意のAxiomユーザーの敏感情報にアクセスし、プライベートウォレットの活動を追跡できたという点にある。

公開された動画の中で、Brooxは「その人に関するあらゆる情報を調べられる」と宣言している。さらに懸念されるのは、彼らがユーザーを監視するだけでなく、複数の著名なKOL(キーオピニオンリーダー)のプライベートウォレットアドレスを表にまとめ、これらのKOLが未公開の建玉情報を公開前に把握し、先回りして取引し利益を得ようとしていた点だ。録音証拠によると、Brooxは2026年2月の通話中に、権限を利用して他者の短時間で20万ドルの利益を得る計画を立てており、こうした行為は2025年初頭から継続していた可能性を示唆している。

背景とタイムライン:スター・プロジェクトの急落

Axiomは、MistとCalが2024年に設立した暗号通貨取引所で、その成長は非常に早かった。2025年冬には、著名なインキュベーターY Combinatorの支援プログラムに選ばれ、業界の新星と見なされ、最も収益性の高い企業の一つに急成長し、これまでに39億ドル超の収益を上げている。しかし、そんなスター・プロジェクトでさえ、短期間で深刻な信頼危機に陥った。

  • 2026年2月24日:ZachXBTはSNS上で、2月26日に暗号業界の「最も稼ぐ企業の一つ」が長期にわたりインサイダー取引を行っていた重大調査を発表すると予告。
  • 2026年2月26日:ZachXBTは正式に調査報告を公開し、対象はAxiom Exchangeであることを明らかにし、録音、スクリーンショット、オンチェーンアドレスの分析を含む詳細な証拠チェーンを示した。
  • 同日、Axiomは迅速に公式声明を出し、「従業員の乱用行為に衝撃と失望を覚える」と表明し、関与した従業員の内部ツールへのアクセス権を即座に剥奪、調査を継続し、違反者の責任追及を約束した。

データと構造分析:予測市場が異なる「世論図示」へ

この事件が公表される前、予測市場Polymarketでは「ZachXBTがどの企業を暴露するか」のコントラクトが資金のやり取りの舞台となり、そのデータの推移には深い意味がある。

2月26日、事件の公表前にこのコントラクトの累計取引額は約2900万ドルに迫り、プラットフォーム内でも最も注目された案件の一つとなった。データは、市場の「疑惑」分布を明確に示している。

  • 首位:Axiomは29%の確率と565万ドル超の取引量でトップに立ち、市場資金の集中投票が最終結果を事前に示唆しているようだ。
  • 追随:Meteoraは28%の確率で続き、二強の構図を形成。
  • 長尾:Pump.funやHyperliquid、さらには一部の主要取引所もリストに入り、確率は低いものの存在感を示している。

この構造化されたデータは、暗号市場の「集団知性」が予測市場のような新たな金融ツールを通じて、業界の出来事に先行して価格付けを行っていることを示唆している。確率を単純に事実と同一視できるわけではないが、数千万ドルの資金が動くことで、疑惑の対象は真実が明らかになる前から大きな評判の衝撃を受けている。

世論の見解分析

事件発生後、市場の見解は主に以下の観点から展開されている。

  • 関与従業員の行為への非難:これが大勢の見方だ。ユーザの信頼を裏切り、内部情報を悪用して市場で「不正行為」を行ったことは、暗号業界の「非信頼化」や「透明性」の核心理念に反している。KOLも一般ユーザーも、これらのインサイダー取引の対抗馬となり得ることから、広範な憤りを呼んでいる。
  • Axiom内部管理体制への疑問:Axiomの対応は迅速かつ断固としているが、内部管理の有効性については依然疑問の声もある。設立から1年余りで巨額の利益を生み出したスター・プロジェクトが、なぜ数か月にわたりこのような行為を放置していたのか。成長追求の過程で内部リスク管理やコンプライアンス文化の構築を疎かにしていたのではないか、という指摘だ。
  • 「調査過程の漏洩」についての議論:ZachXBTの調査過程で情報が漏れたことで、Polymarket上の賭け合いは一層激化した。一部は、市場の高効率な情報集約能力を評価する一方、これが操縦や競合排除のために利用される可能性も懸念されている。

業界への影響分析

ZachXBTによるAxiomの暴露は、単一プラットフォームの枠を超えた影響をもたらしている。

  1. ユーザーロイヤルティのコスト増:この事件は、中心化取引所(CEX)の「内部者リスク」が常に存在することを再認識させる。資産やプライバシーをプラットフォームに預ける以上、内部ガバナンスの充実度に依存せざるを得ない。今後は、投資家は取引所選びにおいて、コンプライアンス履歴やセキュリティ監査、透明性をより慎重に評価する必要が出てくる。
  2. 内部ツールの監査強化圧力:顧客サポートやデータ分析などのバックエンドツールは、今後より厳格な監査対象となる。ユーザーデータへのアクセス権の最小化、アクセス記録の徹底、異常行動の監視といった対策が、業界の必須課題となる。
  3. 規制の関心高まり:暗号業界は非中央集権を強調する一方、こうした中心化された権限を悪用したインサイダー取引は、伝統的な金融規制の線を越えている。規制当局はこの種の事件を契機に、データセキュリティやインサイダー取引防止のための規制強化を進める可能性が高い。
  4. オンチェーン探偵と予測市場の連携:ZachXBTの個人影響力とPolymarketの資金流動の深い連動は、「世論監視+市場価格形成」の新たなモデルを切り開いた。今後、類似事件の拡大経路は変容し、プロジェクト側も調査対応だけでなく、予測市場がもたらす評判や世論の圧力にどう対処するかが重要となる。

多様なシナリオ展開

現状の事実を踏まえ、Axiom事件の今後の展開には以下のシナリオが考えられる。

  • シナリオ一:積極的な改善(中程度の確率)

Axiomの共同創業者が徹底的な内部調査を行い、関与従業員を解雇し、第三者のセキュリティ企業による全面的な監査を実施、さらにはより厳格な内部権限管理体制の構築やユーザー補償基金の設立を約束。これにより、危機を「骨髄までの改革」に変え、信頼回復を図る。

  • シナリオ二:放置(高確率)

熱狂的な世論の沈静化とともに、Axiomは「権限剥奪」「調査継続」のみを表明し、具体的な改善策や補償案を示さないまま終息。ユーザーは忘却の彼方に、内部リスクは依然として残存し、将来的なリスクを孕む。

  • シナリオ三:規制介入(低確率だが影響は深遠)

被害者範囲や違法額が巨大と判明した場合、米国や他国の金融当局が調査に乗り出す可能性もある。規制当局の介入は、Axiomだけでなく、他の取引所や暗号資産プラットフォーム全体に対し、より厳格なガバナンス規範を導入させる契機となり、業界全体に構造的な変化をもたらす。

結語

Axiom事件は、暗号世界の表面の華やかさの裏に潜む深刻な亀裂を映し出す鏡のようだ。「コードは法律」との理想と、中心化された権力の闇の側面が交錯し、ユーザーが資産を預けるプラットフォームの内部での人間の目線や行動が信頼を脆弱にし、最も貴重な資産となる。ZachXBTの調査は、単なる一企業の傷口を抉るだけでなく、暗号業界の野蛮な成長段階において避けて通れないシステム的な問いを突きつけている——分散化の理想と中央集権的運営が共存する今、取引所の権力の境界線はどこにあるのか?ユーザープライバシーの守り方はどうあるべきか?

Axiomの迅速な対応は評価できるが、真の試金石はその後の改善の深さと透明性にある。暗号業界にとって、信頼危機は進化の契機だ。内部ツールの厳格な監査、従業員権限の最小化、ユーザープライバシーの最優先化を徹底できるかどうかが、今後の業界の命運を左右する。

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